「ごめん、」
──遅くなって、ごめん。
覚悟はとっくに出来てたのに、言い訳ばっかでごめん。
「なんでそんなこと、ゆーのさっ…!」
千往の眼から涙が溢れた。
ぽろりぽろり、止まらない涙───そういえば、泣き顔は初めて見る。
……泣くな、千往。
「ごめんな」
お前を離したくなくてごめん。
「ごめん、とかっ…わけわかんないぃ…!!」
泣き顔もちょっとかわいい、とかこんな時に思ってごめん。
───そして、
“世界一想っている”自負だけ背中に貼りつけて、俺は千往を迎えに行く。
ブロック塀に立て掛けた自転車が俺の後ろで倒れた。無遠慮な音。
俺の世界には千往しかいない。
泣きじゃくる千往の真っ赤な指先。ほっぺた。目尻。
───俺は千往に押し付けるみたいにキスをした。



