ある17歳における不明瞭な愛についての考察





「……い」



千往が口を開いた瞬間、サーフ系のステッカーをべたべた貼りつけた車が通り過ぎた。
ガンガン鳴らされたカーステのせいで上手く聞き取れない。


「え?」


思わず聞き返して次の言葉を待つ。


ぷるぷると震える肩。うつむく表情はよく見ることができないでいる。


…ただ、ぎゅうっと握られている千往の両手。

負荷がかかっているのか、底冷えする朝の中で真っ赤になった手。



「おそいよ……」




───遅い?

おうむ返しに繰り返せば、千往は勢いよく顔をあげる。

俺は突然のことに対応しきれずに立ち尽くしたままで、それを見ていた。




俺が思う千往は、
いつだってのんびりとしていて、マイペースで。

泣いたり怒ったり、目立った負へ向かう感情の起伏なんてない。



だから、今日の千往に感じた違和感はたぶんコレだ。



いま千往から伝わるこの痛みは負じゃない。





だけど、届かずにくすぶるその痛みが向かう先は



────きっと、俺だ。