距離にして、約15メートル。
どんどん縮まる距離に、千往が振り返る。
真っ赤な頬、白い吐息。
今にも泣き出しそうな顔。
「……なあ!!!」
そんな姿に、たまらず千往を呼ぶ俺の声は裏返ったけど、そんなのどうでも良かった。
千往は身体をびくりと震わせ、走るスピードを落としたかに見えた。
つられて、まんまとスピードを落とす俺。
それから、振り返る千往。
そして突然、千往はばかみたいに加速し出した。
少しだけ距離がひらく。
だけど、さすがのあいつも朝の冷気と乾燥の中でずっと走っていられるよーな体力は持ち合わせていないらしい。
「……はっ…!…はあっ…!!」
すぐに息を荒げた千往の背中を、俺のリーチに捉えることができた。
もうほとんどあいつの脚は動いていない。
手を伸ばせば届く、そんな距離だ。
だけど俺は少し躊躇った。
捕まえたら、俺はきっと手放せなくなる。
───千往に、隠せなくなる。



