無意識だ。
俺は手元のハンドルをぐっと握ってサドルに飛び乗る。
ペダルを踏み込むと、一周空回りしたそれが俺の向こう脛を叩いた。じん、と鋭い痛みが走る。
まるでF1レースのスタートランプのように、やきもきしながらあと数秒で点灯するはずの青信号を待つ。
数秒のタイムラグでさえ、今の俺には重すぎた。
青信号、ペダルを踏み込む。
「……っくそ、」
もうずいぶん遠くの方で、千往の背中がひらりと揺れていた。
とはいえ。
自転車の俺には追い付けないこともない。
千往との勝負、これだけは────
これと、背比べだけは
負けられない。
「千往っ…!」



