ある17歳における不明瞭な愛についての考察






千往の隣でふうっと息をつく。白い息がぼんやりと現れて消えた。


ちらりと横目に千往の様子を伺うと、やっぱり少し遠くをじっと見つめて何か考えているらしかった。





「ありと」



「…なに?」



千往は、目を細めて続けた。

「リセットボタンはついてないよね」



“リセットボタン”?





俺の中に巻き起こった渦は、その言葉の意味を…それを放つ千往の意思を捉えかねて、むくむくと膨張していく。





リセットってことは、なかったことにするってことか?


千往の何かを?俺の何かを?

それとも、勝負の結果を?





「…そんな機能、ついてない」




俺はそう言った。

内容がなんであれ、千往とのあいだの何かをなかったことになんか、俺にはできなかった。したくなかった。




「じゃあ、戻らないんだね」



大型のレッカー車が鈍い音と共に横切っていくと、黒い排気ガスが立ち込めた。





「戻んないよ」