『匡人…?』 唇を離すと俺の様子を窺う凪の姿 「なんでもねえよ」 『…ん…』 誤魔化すようにまた口づける 大丈夫 まだ大丈夫だ 俺だって今まで散々女に嘘をついてきたじゃないか しかも相当性質の悪い嘘を それに比べたら可愛いもんだ 紘一さんと俺に秘密で会ってたくらい、どうってことない 気のせいだ 胸を渦巻くこの想いは嫉妬なんかじゃない 『匡人…やっぱり…おかしくない?』 「黙ってろ」 瞳を閉じる もうこれ以上の言葉は聞きたくなかった―…