ぽかーんとしていると、藤原くんはさらに言った。

「無理に写真を撮ろうとしないで、撮るものがくるまで待ったら? って意味だよ」

藤原くんの言葉に、あたしは目を丸くした。

そして、笑ってしまった。

「何がおかしいんだよ」

藤原くんは顔を赤くした。自分が変なことを言って、笑われたんだとおもったのかな?

ううん、そうじゃない。

「ごめん、笑うつもりじゃなかったんだ」

でも、笑ってしまった。

ごく当たり前のことを。あたしが見失っていたことを、藤原くんがさらっと言っちゃったから。

「藤原くん、ありがとう」

藤原くんはあたしの言葉を聞くと、また背中を向けた。

しゃがんでリィを地面に下ろし、背中を向けたままで言った。

「ありがとうは、撮りたいのが撮れたら言えよ」

同意を求めて振り向く。

藤原くんの顔には、笑顔が浮かんでいた。

それはとても優しい笑顔で、最初にこの裏庭で見た笑顔だった。


どきん……

あたしの心臓は音を立てた。