確かにそうだ。言う通りだ。

写真は撮ろうと思って、撮れるもんじゃない。

偶然の重なりによって、その瞬間素晴らしい、いい一枚が撮れる。

「わかってる」

あたしは構えをゆっくりときながら、よわよわしい声を出してしまった。

自分でもびっくりするくらい、情けない声だった。

「あたしは、あのときみたいな写真が撮りたいの」

背中を向けていた藤原くんが、こちらに顔を向けた。

「中学生の時に撮った、一枚の写真。葉っぱの上にのった、まるく光があたって輝いていた朝露。今にもこぼれ落ちそうなきれいな一瞬を、撮りたいだけなの……」

あの一枚が、あたしの始まりだった。

すべてがつまった一枚を撮りたいけれど、なかなか撮れないし、今は写真を撮らなきゃいけないっていう義務みたいなものを感じていた。

純粋に写真を撮りたいっていう気持より、コンクールに出さなきゃいけないって義務に、あたしの心はとらえられていた。

「撮りたい気持ちがあるなら、それでいいんじゃない? その気持ちだけで、いいんじゃないのかな?」

藤原くんは、足元にいるリィを抱えると立ち上がった。

「ほら、ことわざにもあるだろ? 鳴かぬなら、鳴くまで待とうホホトギスってね」

意味はわかるけど、何でそのことわざをいうの?

そう思った。