「ちゃんと、理由があります」

あたしは小さな声で言った。

うつむいた顔をあげ、隣にいる藤原くんの顔を見て答えた。

「あたしは、この人のことが好きです。だから、この作品に好きです。って名前を付けました」

それはとても恥ずかしい告白だった。

そして、あたしにしかできない告白だった。

「だけど……」

あたしは言葉を続けた。

「偶然、告白されるのを聞いてしまった。そして、自分が好きだってことに気づいて、苦しくて、それから彼を避けるようになって……今は話すこともできなくなりました」

自分の声がすごく弱くて、震えるているのがわかった。

でも、言わなきゃ。

あたしは気持ちを奮い立たせた。

「この作品を彼に見せたかった。そして、気持ちを知りたかったです。もう、遅いかもしれないけど……」

「そっかぁ」

藤原くんは納得したみたいだ。

ふぅっと息を吐き出すと、あたしを見た。

「武藤、この作品もらってもいいかな?」

えっ?

それは意外な言葉だった。

言われるとは、これっぽっちも思っていなかった言葉。

「良いの? ダメなの? どっちなの?」

せかすような言い方に戸惑ったけど、あたしはうなずいて「いいよ」と答えて、

「でも、コンクールが終わったらね」と付け加えた。

「わかった」

藤原くんは笑って言うと、また言った。

「俺も、この作品と同じだから」

「何?」

意味がわからなかった。

「武藤のこと、好きだから」

それは予期せぬ告白だった。

あたしは思わず泣いてしまった。