好きな人が告白されているのを、聞いてしまった。

人の告白を盗み聞きして、そして自分の気持ちに気づくなんて……



マヌケだ。



あの一件の後、あたしは藤原くんと、裏庭を避けていた。

プイっとそっぽを向いたり、声をかけられても生返事で、誰が見ても避けているのは明らかだった。


そういう子供じみた事をする自分にも、いやだった。


バカみたい。









それから間もなくだった。

コンクールの日、会場に展示された自分の作品を見て、あたしは切なくなった。

どうして、この作品を出しちゃったんだろう。

額縁に入った作品を眺めながら、あたしはため息をついた。

「出したんだ」

隣で声が聞こえた。その声は聞き覚えのある声だった。

あたしはびっくりして顔をあげ、声の主を見た。

隣に立っていたのは、藤原くんだった。

「武藤、ちゃんと言ってくれないと困るよ」

藤原くんは笑っていた。

ずっと避けていたのに、その藤原くんが隣にいて、そしてあたしに話しかけている。

黙っていると、藤原くんは写真を眺めてから、またあたしを見た。

「この作品の被写体の名前は?」

藤原くんが聞いた。

A1サイズに延ばされた額縁に入った写真。

「藤原玲二さんです」

あたしは小声で被写体の名前を言った。

写真の被写体は、藤原くんだ。

あたしの隣にいる、この人だ。

藤原くんはまた作品を見ると、額縁の下についている作品名のプレートを読んだ。

「作品名、好きです。つけた理由は何ですか?」

それを聞いた瞬間、あたしは顔を赤くして、うつむいた。

「答えられない? 答えたくない?」

黙ったままでいると、

「それとも、好きです。って作品名に、つけた理由はないの?」

藤原くんは言った。