「春樹?」


春樹の眼は、いつになく苛烈な色を湛えていた。


「……少し、怒っています」


予想もしなかった言葉に、恵理夜は驚いた。


「私を、疑いになったことを」


恵理夜は何も答えられなかった。

確かに、春樹を疑ったのは事実だ。

恵理夜のため、自分を省みずに薬を全て捧げ、命の危機にさらされた春樹を、疑った。


「貴方を、取らると思ったわ……」


レミコの言葉に動揺した自分の気持を吐露した。


「私も、貴女を失うかと思いましたよ」


春樹は、掴んでいた恵理夜の手を自分の左胸に当てた。


「私は、貴女のものでしょう」


その顔には、自信に充ちた微笑みがあった。


「……そうね」


恵理夜も、負けじと微笑み返した。

が、薬のせいだろうか、急速に意識が薄れるのを感じた。