――銃声
強く、抱きしめられる衝動。
そして、血が、流れる。
「ご無事、ですか……お嬢様」
弾丸は、春樹の肩を貫通していた。
「春樹、こそ……」
「貴女がご無事であれば」
しかし、言いながら春樹の身体が崩れ落ちた。
「春樹っ」
春樹の呼吸が浅い。出血も驚くほど著しい。傷は深いが、これは異常だ。
「まさか、薬が……」
恵理夜への薬を残すため、自分の薬を犠牲にした代償か。
心配かけまいと、気力だけで持たせていたのだ。
「どうして……」
弱い呼吸で、かすかに春樹は微笑むだけだ。
恵理夜は立ち上がった。

