「それはそうと、君が犯人ではないとして、恵理夜は誰を疑っているんだい」


全員を公平に疑っているというあたり、シラヤナギのフェアな部分を垣間見た気がした。


「正直、全員を疑っています。みんな、同じ焦燥感を持っていたから」

「焦燥感?」

「なんていったらいいのか、わからないけど、そんな感じなんです」

「まあ、恵理夜の勘も及ばないとは厄介だね」

「あら、どうしてですか」

「なんでもないよ」

「そうですか?」


シラヤナギにも、恵理夜の勘は及ばなかった。おそらく、彼の思考は恵理夜の勘を遥かに超えて働いているからだろう。


「こんなことに巻き込まれるなんて、思いませんでした……」


恵理夜は、重いため息と共にそう呟いた。その顔は思いの他、暗く翳っていた。


「……普通に、生活したいだけ、なのに」

「恵理夜?」

「あ、ごめんなさい」


思わず漏れた本音を隠すように恵理夜は笑った。