「口をあけて」


恵理夜は素直に口を開いた。

種類の違う五種類の錠剤を含ませられる。

そして、いたわるような丁寧な手つきで水が与えられる。

恵理夜は、素直にそれを嚥下していく。


「さあ、もう一度」


今度は四種類の錠剤を同じように含ませられる。

水が一筋、口の端からあふれてしまった。

すかさず、優しい手つきで拭き取られていく。


「今日は、注射も必要ですよ」


そっと袖を捲くられ、恵理夜の白い腕が現れる。

そこには幾つかの注射痕があった。


極道の孫だから、ヤクでもキメてるんじゃないか、とからかわれている腕だ。


しかし、春樹の手はそんなことを忘れさせるくらい優しい。

血管を捕えて、優しい手つきで針が刺される。

これが、恵理夜の最後の薬だ。