「お怪我はないようで何よりです」

「……手」

「……なんでしょう?」


首を傾げる春樹に、恵理夜は無言でその右手を取った。

拳が赤く腫れ上がっていた。


「貴女が、ご無事ならば」


と、春樹は逆に恵理夜の手に口付けた。


「でも、今日は減点ね」

「申し訳ございません」

「帰ったらお茶を入れて」

「かしこまりました」


後ろから、車の気配を感じ春樹は運転席に乗り込んだ。


「帰りましょう」


春樹は、滑らかな動きで車を発進させた。