――運転手によってゆっくりと車が動き出す。 春樹は、恵理夜の家に仕える使用人の一人だった。 だが、春樹は極道ではなくあくまで恵理夜に仕えるただの使用人――恵理夜は、執事と呼ぶのを好んだ。 「今日の学校はいかがでしたか」 「やっと教室にストーブが入ったわ。来週にはストーブの着いた部屋で授業が受けられそうよ」 「それは何よりです」 「ええ、いい天気だけど、もっと寒くなっていくのね」 言いながら恵理夜は、ぼんやりと窓の外に目をやる。 「え……」 一瞬、妙な光が見えた。 ――タァン