私は思いきり変な声で言った。


「ここの住居者にはね、一番初めにアップルパイを作って差し出す決まりがあるんだ。」


「でもなんでアップルパイって・・・」


「・・・母さんがさ、好きだったんだ、アップルパイ。」


よく見ると彼の目は少し潤んでいて、少しだけ昔の事を思い出しているように見えた。


「お母さん・・・死んじゃったの?」


「ううん、行方不明。父さんは死んでいて、もうこの世には居ない。」


「・・・そうなんだ。」