「水城先生ー!
分かんないとこあるんで教えてください!」
「ん?どこ?」
そう言って蒼ちゃんは生徒の持っていたノートを見ながら丁寧に教えていた。
蒼ちゃんは今、中学校の数学の先生をしている。
ノートを見ても数学嫌いの私にはちんぷんかんぷんだった。
「ねぇ、瑠は分かる?
この、なんだ、変なやつ…」
「あー、∫(インテグラル)?
積分法とかだろ?
つーか、これ、高校の範囲だから知らなくて当たり前。」
瑠は私より2歳年上だからか、物知りだ。
「今時はゆとりから脱して難しーの勉強してんだなぁ。」
なんて言って納得したように頷く瑠。
…もう死んでから15年もたったのか。
イケメンなおじさんになってきた蒼ちゃんを見て、ため息をつく。
「もうそろそろだな、ここに居られなくなるのも。」
私の心を読んだのか分からないが、いきなり瑠がそんなことを言い出した。



