ヒューゴが来た事に気付かずに剣を振るい続けるリオナスの姿を、黙って凝視し続けるヒューゴ。そして一呼吸を着くように足を止めたリオナスは、入口で厳しい表情をしながら自分の姿を見ているヒューゴに気付いた。
「何時から居たのですか兄上?」
「ついさっきだよ…」
そう答えたヒューゴは、流れ出る汗を綿で丁寧に織られた布地の物で、流れ出る汗を拭いているリオナスの下に近づく。
リオナスは手に持っていた大剣を鞘に納め、鍛練場と休憩が出来る場を隔てている柵に大剣を立て懸けると、柵にもたれ掛りながら言葉を発した。
「兄上は今日の俺の試合をどう見ましたか?俺は昔に比べ成長していますか?」
リオナスの言葉を受けたヒューゴは、少し考える仕草をし、時間を溜めてから一言。
「成長はしている…だが少し物足りないな」
ヒューゴにそうはっきりと言われたリオナスだが、特に驚いた表情をする事はなく、そのまま言葉を続ける。
「自分でも分かっているんです…成長していない事は。ですが、日々鍛錬を積んでいても、結果が伴わないんです。ギルバート殿や他の騎士達は俺の事を褒めて下さるのですが、俺自身が全く強くなっている実感がないんですよ」
「実感がない…か。それはそうだろうな…鍛練はあくまで鍛練だ。安全がある程度保障されている状況でどれだけ鍛えても、身につく力などたかが知れている」
リオナスは実戦経験に欠けている。普段から緊張感を持って生活し、それを補おうとしているのはヒューゴも気づいていたのだが、それでもダメなのだ。
実践とは即ち、どれだけ自分を命の危険に晒してきたかだ。
宮勤めのリオナスにそれを経験する手段などない。
「兄上はどのようにしてあの様な技術を手に入れたのですか?」
「あのようなって?」
リオナスはヒューゴの姿を凝視し、眉間に皺を寄せる。
「槍術です。エストール王国には確立された槍術の流派は存在しません。学ぶ事の出来ない槍術をどの様にして身に付けたのか…俺はそれが不思議で仕方がありません」
「何時から居たのですか兄上?」
「ついさっきだよ…」
そう答えたヒューゴは、流れ出る汗を綿で丁寧に織られた布地の物で、流れ出る汗を拭いているリオナスの下に近づく。
リオナスは手に持っていた大剣を鞘に納め、鍛練場と休憩が出来る場を隔てている柵に大剣を立て懸けると、柵にもたれ掛りながら言葉を発した。
「兄上は今日の俺の試合をどう見ましたか?俺は昔に比べ成長していますか?」
リオナスの言葉を受けたヒューゴは、少し考える仕草をし、時間を溜めてから一言。
「成長はしている…だが少し物足りないな」
ヒューゴにそうはっきりと言われたリオナスだが、特に驚いた表情をする事はなく、そのまま言葉を続ける。
「自分でも分かっているんです…成長していない事は。ですが、日々鍛錬を積んでいても、結果が伴わないんです。ギルバート殿や他の騎士達は俺の事を褒めて下さるのですが、俺自身が全く強くなっている実感がないんですよ」
「実感がない…か。それはそうだろうな…鍛練はあくまで鍛練だ。安全がある程度保障されている状況でどれだけ鍛えても、身につく力などたかが知れている」
リオナスは実戦経験に欠けている。普段から緊張感を持って生活し、それを補おうとしているのはヒューゴも気づいていたのだが、それでもダメなのだ。
実践とは即ち、どれだけ自分を命の危険に晒してきたかだ。
宮勤めのリオナスにそれを経験する手段などない。
「兄上はどのようにしてあの様な技術を手に入れたのですか?」
「あのようなって?」
リオナスはヒューゴの姿を凝視し、眉間に皺を寄せる。
「槍術です。エストール王国には確立された槍術の流派は存在しません。学ぶ事の出来ない槍術をどの様にして身に付けたのか…俺はそれが不思議で仕方がありません」


