風に揺蕩う物語

「ヒューゴ様…やはり私には無理でございます。万が一私が、粗相を起こす様な事があったら、シャオシール家の家柄に傷をつけてしまいます。私には社交場での作法の自信がありません…」

ヒューゴよりも高貴な雰囲気を持っているシャロンは、自分を客観的な視点で見れていないようだ。ヒューゴはこの時そう感じていた。

「シャロンが粗相をする姿が思い浮かばないんだけどな僕は…うーん」

まさかここまでの拒絶をされるとは思っていなかったヒューゴは、段々とシャロンの困っている様子が可哀そうになっていた。

軽い思いつきで用意した舞台だし、嫌がっているのなら今回は止めにするか。そう考えていたヒューゴだったのだが、先ほど別れたギルバートがこの場に現れた事で、次の言葉を出す事が出来なかった。

ギルバートは相変わらずの大きな声でヒューゴに話しかける。

「おぉヒューゴ殿。リオナス殿がお主に会いたいそうだぞ。何やら二人で話したい事があるようだ」

ヒューゴは、そう言いだしたギルバートに怪訝な表情を浮かべ、声を低くしながら言葉を返す。

「リオナスの奴…ギルバート殿に言伝を頼むとは何様のつもりなんだあいつは」

遺憾の表情を浮かべるヒューゴの様子を見たギルバートは、少し慌ててリオナスを弁護する。

「いやいやヒューゴ殿、ワシが買って出た事ゆえリオナス殿のせいではないのだよ。ワシは少しシャロンと話をしたいと思っていてな。出来ればリオナス殿との用事が終わるまで、シャロンと会話をさせて頂きたいと思いこの場に来たまでなんだ」

「私と…ですか?」

「そうだ。ヒューゴ殿…シャロンを少しの時間お借りしてもよろしいか?」

ギルバートの言葉にしっかりと頷いて見せたヒューゴは、腰を上げると自分の席をギルバートに譲る。

「僕からもよろしくお願いしますギルバート殿。どうかシャロンをこれからも目をかけて頂きたいです。シャロン…それじゃ僕はリオナスと所に行ってくるよ」

「心得た。リオナス殿は騎士の鍛練場におるのでそこに足を運んで頂きたい」

「はい。行ってらっしゃいませヒューゴ様」