風に揺蕩う物語

間合いで言えば一歩半ほど違う。

リオナス…お前はそれに気づいているか?正確な間合いを計れなければお前に勝ち目はないぞ。

リオナスとセヴィルが定位置についた処で、ランディス国王が席から立ち上がる。そして両者の顔を見た後、手を振り上げ勢い良くその手を振り落とした。

「始めっ!」

その言葉と同時に二人は構えに入り、円を描く様に動き出した。

リオナスは剣を正面に構え、剣先を前に突き出すように歩く。対してセヴィル将軍は刀を両手で持ち、斜に構える様にしながら歩いている。

ちょうど一周する様に歩いた二人。最初に動きを見せたのはセヴィル将軍だ。

リオナスの小手先を狙い打つように一気に踏み込み、突きを入れる。リオナスは先手を取られる形でその突きを丁寧に防御し、一度間合いを取る。

とっさの動きで柄を持ちかえ、前に突き出すように構えていた剣先を斜に移行し防御した辺り、リオナスの剣技も流石と言える。

だが…。

「随分と慎重だなリオナスは。気遅れしているわけでもないだろうに…」

ヒューゴの今の攻防に対する採点は辛口だった。先手を取られたのは別に悪い事ではない。それに防御も完ぺきに近い。

でも…。

「逃げ腰では勝てる勝負も勝てないぞリオナス」

一度間合いを取る。それこそがあの状況では問題だった。

なぜなら間合いが取れたのは、セヴィル将軍の追い打ちがなかったからだ。明らかにセヴィル将軍はリオナスの様子を見ている…。

「ヒューゴ様…」

シャロンはヒューゴの口調が変化している事に気づく。それも実の弟にかける様な優しさなど微塵も感じないほどの口調に…。

「リオナス殿もそれに気づいている様だぞヒューゴ殿。今度はリオナス殿から仕掛けるようだ」

ギルバートもまたヒューゴ同意見だったようで、そう話すとリオナスの動向に注目する。