会場が一気に静まり返り、観客が固唾を飲んで見守ると、中庭の奥の方から王族が姿を現した。

最初に姿を現したのはヴェルハルトだ。先ほどと同じ服装で現れたヴェルハルトは、普段通りの冷静な表情のまま歩むと、会場からは大きな拍手が送られる。そしてその後ろから姿を現すのが王妃であるセレスだ。

落ち着いた色合いを見せる真珠色のドレスを身にまとったセレス。白い肘までの奥行きがある手袋をはめ、優雅に微笑を携えながら観客に手を振ってみせる。

その後ろから姿を現すのが国王のランディスだ。白と黒の色彩を使い、複雑な刺繍が施された衣装を身にまとったランディス。その手には金の装飾がなされた錫杖が握られており、穏やかな表情のまま姿を現す。

最後に現れたのがセレスティアだ。白いドレスを身に纏い、王宮の前で会ったときは結い上げられていた髪型が、いまでは下に下げられ、頭にティアラを付けた状態で姿を表す。

セレスティアは少し固い表情をしており、皆に手を振っては見せるものの、考え事をしている様に見える。

王族が全て自分の席に着くと、その後にヒクサクが従者数人と共に姿を表す。

僕は拍手の手をそのままに、セレスティアの浮かない表情が少し気になり、セレスティアから視線が外せなかった。

するとセレスティアは僕の姿を見つけたのか、無理やり微笑を浮かべると、視線を外す。

「セレスティア様が俺の姿を見て笑った。俺はなんと罪深き男なのだろうか…」

「お前じゃねぇよアスラ。間違いなく俺に向けての笑顔だ」

僕だよ…たぶんだけど間違いない。

「戯言も大概にしておけよ二人とも。姫様を侮辱する様な発言はこのワシが許さん」

「ギルバート先生っ少し冷静に…」

「俺たちは姫様に忠誠を誓ってますから。断じてその様な事はありませんって」

本当にこの二人は…。口に出すからややこしい事になるんだよ。

それにしてもどうしたのだろうか。

セレスティアのあの浮かない表情は、とても気になる。とはいえ、聞きに行く事も出来ないし…。