風に揺蕩う物語

ヒューゴは気分を変えるように少し背伸びし、背中の筋を伸ばした。

「さてと…そろそろ薬の調合でも始めるかな。シャロン。手伝ってくれるかい?」

「もちろんです。何なりと言いつけてください」

薬の調合。これこそがヒューゴの医療だった。

体に良い薬草を煎じて薬を作り、それに昌霊術を使い、様々な傷を治せる万能薬を作って治療するのだ。

ヒューゴとシャロンは病院という名の豪華な建物の庭に出ると、花々に囲まれるように建っているログハウスの中に入って行った。

ログハウスの中には、数多くの薬草や、調合器具が置いてあり、ヒューゴとシャロンは時間を見つけてはこのログハウスで万能薬を作っていた。

主に二人は役割を分けて薬草作りをしている。シャロンが用途に分けて薬草を調合し、ヒューゴが昌霊術を吹き込み万能薬を完成させる。

昌霊術を吹き込むのはさほど時間がかからないので、ヒューゴもシャロンの仕事を手伝おうと最初の頃は言っていた。だがシャロンは、自分の仕事だと言い、ヒューゴに手伝わせようとしなかった。

最初の頃は粘って一緒に作業をしようと言っていたのだが、シャロンの真顔の眼力に負けたヒューゴは、一日の仕事分の万能薬を作ると、早々とログハウスを出て、病院の自室に戻るようにしていた。

なぜなら間違いなく自室で休むようにとシャロンが言うからだ。

もちろん真顔で。

自室に戻ったヒューゴは、書物に目を通すようにしている。ただ休むのは逆に疲れてしまう性分なのだ。

薬草の効能が詳しく書いてある文献に目を通していたヒューゴだったが、少し読み進めると本を閉じ、椅子の背もたれに寄りかかるように眼を閉じた。

最近めまいが酷くなってきたな…。

やっぱり体が弱ってきている。これも昌霊術の影響なのかな。

ヒューゴには持病があった。原因は何もわかっていない。

子供の頃は健康そのものだったのだが、15歳を過ぎた頃から体に変調の兆しが出始めたのだ。