「もしやギルバート様は、イクセンでの戦に赴かれていたのですか?」
「左様。ワシもあの当時は現役の騎士だったから、戦に駆り出されたのだよ。ヒューゴ殿のお父上のディオス殿と一緒にな」
ギルバートはそう言うと、シャロンを孫を眺めるかの様に慈愛を込めた視線で眺めた。
イクセンとは今はもう存在しない亡国の名だ。亡国と言っても、元はエストール王国の統治地区の中にあった国で、非常に貧しい国だった。
土地柄あまり作物が実らない大地だったのもあろうが、それ以上に当時のイクセンの国王が暴君だったのがこの戦が始まるきっかけになっていた。
イクセンの国王は、己が贅を極める生活を満喫する為に、どんなに不作の年であろうが固定税で国民の年収の約7割近い税を徴収する事を原則とし、それを怠った者は処刑するとお触れを出していた。
ちなみにエストール王国での税の徴収は、変動はあるものの多くて2割。豊作の時などは1割ほどで治水や兵糧の完備を行い、飢饉の時の食糧確保まで滞りなく済ませている。
そして兵力も大陸一を維持できているのだ。
イクセンでの税はもちろん国民には何も還元されず、治水工事がなされないので疫病は蔓延し、塾などの学び舎を建設していないので、読み書きが出来る者がほとんどいない状態を何とも思わない国王だった。
そんなイクセンの国王が唯一税を還元するのが軍部だった。武器や馬はもちろん、古代技術と呼ばれている気球なるものを密に研究させ、自国の領土を拡大する為の画策を行っていた。
エストール王国でもイクセンの不穏な雰囲気を察知し、イクセンの国に援助していた小麦や織物の支援を一時止め、条件として法律の改正とエストール王国の騎士の常駐の提案を申し入れる為の使者を出した。
だがその使者は、無残にも切り刻まれた死体になって帰ってくることになったのだった。
「左様。ワシもあの当時は現役の騎士だったから、戦に駆り出されたのだよ。ヒューゴ殿のお父上のディオス殿と一緒にな」
ギルバートはそう言うと、シャロンを孫を眺めるかの様に慈愛を込めた視線で眺めた。
イクセンとは今はもう存在しない亡国の名だ。亡国と言っても、元はエストール王国の統治地区の中にあった国で、非常に貧しい国だった。
土地柄あまり作物が実らない大地だったのもあろうが、それ以上に当時のイクセンの国王が暴君だったのがこの戦が始まるきっかけになっていた。
イクセンの国王は、己が贅を極める生活を満喫する為に、どんなに不作の年であろうが固定税で国民の年収の約7割近い税を徴収する事を原則とし、それを怠った者は処刑するとお触れを出していた。
ちなみにエストール王国での税の徴収は、変動はあるものの多くて2割。豊作の時などは1割ほどで治水や兵糧の完備を行い、飢饉の時の食糧確保まで滞りなく済ませている。
そして兵力も大陸一を維持できているのだ。
イクセンでの税はもちろん国民には何も還元されず、治水工事がなされないので疫病は蔓延し、塾などの学び舎を建設していないので、読み書きが出来る者がほとんどいない状態を何とも思わない国王だった。
そんなイクセンの国王が唯一税を還元するのが軍部だった。武器や馬はもちろん、古代技術と呼ばれている気球なるものを密に研究させ、自国の領土を拡大する為の画策を行っていた。
エストール王国でもイクセンの不穏な雰囲気を察知し、イクセンの国に援助していた小麦や織物の支援を一時止め、条件として法律の改正とエストール王国の騎士の常駐の提案を申し入れる為の使者を出した。
だがその使者は、無残にも切り刻まれた死体になって帰ってくることになったのだった。


