風に揺蕩う物語

たっぷり時間をかけて身支度を整えたシャロンは、かなり恥ずかしそうな様子でヒューゴや使用人達の前に姿を表す。

着飾ったシャロンの姿を見たヒューゴや使用人達は、思わず感嘆の声を上げた。

瑠璃色の髪の毛を栄えさせるには、やはり瑠璃色に限る。シャロンの髪の毛は薄い瑠璃色であった。

それよりも少し暗い瑠璃色のドレスを選んだ仕立て屋の女将さんは、シャロンの立ち振る前や容姿を考慮した結果、その中でも一際色気のあるドレスを選んだ。

腕と肩が全てあらわになっているマーメイドドレスだ。足元は、膝の上辺りから下にかけて大きく開け、その上から薄い生地で覆う造りになっており、シャロンの細い魅力的な足が薄い生地の奥から見える。

腰には括れを強調する為にサッシュベルトが設けられており、ドレスに使われている薄い生地と相まって、さほど主張をせずに括れを作るという役割を果たす。

髪結いは肩と腕があらわになっているので、高い位置で三つ編みの束を器用に結い合わせ、綺麗な肌を持つシャロンの長所を生かす事になった。髪留めには真珠のピンを使用しており、大国の姫君を感じさせる仕上がりにである。

化粧師が施したのだろう化粧は、赤みを帯びたシャロンの薄い唇を十分に閏わせ、頬には薄い桃色の色粉をなじませて血色の良い顔色を演出する。そして目元には薄い紫色の色粉を軽くなじませている。

首元には小さなダイヤが散りばめられた優雅なネックレスを着け、耳には夕闇をイメージさせる星が三つほど連なった先に、三日月が装飾されている大人しめの銀の装飾をあしらってある。

それに黒いヒールと三連チェーンのブレスレットを着けたシャロンは、だれがどう見ようとも洗練された美貌を持ち合わせている姫君に見えた。

「あの……ヒューゴ様。如何でしょうか?」

シャロンにしては歯切れの悪いもの言いだ。何も言わないヒューゴや他の使用人の様子に、だんだんと不安になって行ったのかもしれない。

だが今のシャロンの姿を見て、綺麗かどうかなど聞くのは、それこそ愚の骨頂の様な気がするとヒューゴは感じていた。つまりは答えは一つなのである。

「綺麗だよシャロンっ!とても綺麗だ!驚きすぎて言葉が出なかったぐらいだよ」