風に揺蕩う物語

心配症な性格は相変わらずのシャロンにヒューゴは、暇を与える事件の後から距離の近くなった二人の様子を現すかの様に、シャロンの頬に手を当てながら話しだす。

「大丈夫だよシャロン。セヴィル殿は歴戦の騎士。相手に大怪我を負わせる様な事はしない。それに試合と言っても勝ち負けを見る為の物ではなく、陛下の御前で武勇を示す為の儀式みたいなものだからさ」

「左様でございますか。ヒューゴ様がそう仰るのなら…私も安心してお待ちしております」

安心と言葉にしても気になるのだろう。シャロンの表情は浮かない。

多少気の毒に思ったヒューゴは、シャロンにこう提案した。

「シャロンも僕と一緒に式典に出席するかい?」

「何を…私が式典に出るなどそんな事出来る訳が」

「出来るさ。僕の従者として式典に参加すれば良いだけの事なんだし。それにリオナスが試合をするんだから、参加理由はそれで事足りる」

思いついたら即行動。ヒューゴは今日の病院での雑務が終わった後、シャロンを着飾る為の準備を始めた。

シャロンがどれだけ断わりを入れてもどこ吹く風で、聞く耳を持たないヒューゴ。

ヒューゴには考えがあった。というのもシャロンは自分が領家の姫君に容姿で勝てないと言い張っている。

なら勝負させれば良いだけ。それをはっきりと確かめる方法が一つだけある。

一晩でどれだけの物が用意出来るか分からないが、やってみよう。

シャロンは一抹の不安を感じながらも、生き生きとしているヒューゴの姿を止める事が出来ず、ただ身分不相応だと嘆きながらヒューゴを見守っていた。

翌日…。

シャロンは目覚ましい変化を遂げて、姿を現す事になる。

ヒューゴはドレスの仕立て屋に多くのドレスを屋敷に持ってくる様に指示を出し、化粧師や髪結いを屋敷に招いていた。

リオナスとの食事で一度、寸法を調べていたシャロンは、ドレスの寸法を調べる手間が省けていたのですぐに似合うドレスを用意する事が出来た。