風に揺蕩う物語

「私がリオナス様と同じ食卓に座るなどそんな…」

恐れ多いと考えたシャロンは、そう言いながら後ろに下がる。

「何を気にする必要がある。シャロンは兄上に暇を出されたのだろう?なら何も気にする必要などないではないか」

もっともな事をリオナスが言うと、口笛を吹きフーガを近くまで呼び寄せる。そして馬に飛び乗ると、そのままシャロンの腕を掴み、馬の上に運んだ。

流石に上級騎士であるリオナスの腕力は相当なもので、シャロンの細見な体型など臆にもしない。

「さて向かうか。今日はシャロンの好きな魚料理のレストランにでも行こうか…その前に服装を変えないといけないがな」

年頃の女性を一撃で葬りかねない様な笑みをシャロンに向けるリオナス。

シャロンはここで考える。女性の扱いなどどこで覚えたのだろうかと…。

毎日武に励み、エストール王国やシャオシール家の為に日々努めているリオナスのシャロンの知らない姿。昔から仕えているのに、知らない姿がまだあったと新鮮な気持ちを覚えた。

その後二人はドレスの仕立て屋に向かい、シャロンの体型に合わせたドレスを選んでもらった。

久しぶりに着るドレスに、身分不相応だと恥ずかしさを見せるシャロンに、リオナスは、女性を喜ばす言葉をかける。

--ドレスの輝きは着る者を選ぶものだ。だがシャロンの場合は、ドレスの輝きに負けずとも劣らない輝きを秘めている。

そして決まり文句は「俺は世辞は言わん」だ。

仕立て屋の女将さんも大層シャロンの事を褒めていた。女将さんも最後に「私も世辞は言いません」と言い、その言葉を聞いたリオナスに「それでは商売上がったりだな」と言われ、その場に笑いを起こしていた。

その後は、リオナスがたまに訪れるというレストランで、フルコースの料理を堪能する2人。シャロンは丸一日食事をとっていなかったのもあって、リオナスに気を使いながらも食事をたらふく堪能した。

そして最後のデザートがテーブルに運ばれてくると、リオナスが話を切り出した。