「どうしたんだい。ぼーっとリヴァナリスなんか眺めてさ」

リヴァナリスとはこの場所とは別の世界の事を言う。

そこには生命があり、多種多彩な生命が息吹く場所だ。

「これが俺の仕事だ」

「違うでしょ。リヴァナリスの観察は君の部下のそれまた部下の仕事だよ。君の仕事はそんな部下に指示を出したり、面倒な会議に顔を出す事だよ」

ため息交じりにそう言いうと、二人は互いに同じ景色に視線を送る。

「ねぇクライブ…君は何を考えているんだい?」

クライブと呼ばれた者はその問いには何も答えず、ただリヴァナリスを眺めていた。腰元まで伸びている艶やかな亜麻色の髪に、切れ長な目を持つこのクライブと呼ばれる者は、男にも女にも見えない体躯をしている。

声だけ聞くと男のそれ。顔つきを見ると女のそれ。

だがどちらも正解ではない。そんな存在。

「そろそろ仕事に戻ってもらたいんだけどなぁ…」

「ロラン」

ロランと呼ばれた者は、リヴァナリスを眺めていた視線をクライブに向ける。

ロランもまた腰元まで伸びる髪をしていた。その色は蜂蜜の様な色をしている。ロランと呼ばれる者もまた、性別がはっきりしない体躯をしている。

「リヴァナリスに降りてみようと思う」

「……自分の言っている意味もちろん分かってるよね?」

驚いたと言うよりかは少し呆れたような表情をロランはしていた。だがクライブは特に気にした様子もなく言葉を続ける。

「あぁ…飽きたんだ。この何も起きない世界にな」

「それだけの理由かい…かなり危険だよ?」

「覚悟の上さ。それに感じてみたいんだ…生命ってものを」

クライブはそう言うとずっと眺めていた視線をロランの方に向け、こう言い放った。

「人生ってものを味わってみたいんだ。協力してくれロラン」