風に揺蕩う物語

その後レオナを先頭にしてヒューゴはセレスティアの下に向かった。

それなりの距離を進んだ所で、目的の場所が見えてきた。その場所は王宮の中にいくつもある箱庭の一つである。綺麗な花々に囲まれる様にひっそりと佇むその場所は、広大なフォルミス湖を見渡せ、非常に景観がよろしい場所だ。

ヒューゴは何度かこの場所に足を向けたことがあった。ヒューゴがまだ小さい頃、父親に連れられ来た事のある思い出深い場所だ。

離れの前には、セレスティアの近衛兵が二人見張りをしており、レオナとシズネは二人に一礼すると、ヒューゴの方に目配せをした。

近衛兵は、ヒューゴに騎士の敬礼を返すと、静かにドアをノックし、中に居る人物に声をかけた。

「ヒューゴ・シャオシール様がお見えになりました」

「待っていたわ。中に入ってもらって…」

その言葉が聞こえていたヒューゴは、背筋をキチンと伸ばし、ゆっくりと室内に入っていく。部屋の中は豪華な装飾品が飾られてはいるが、品性のある落ち着いた感じの内装だ。

その奥の椅子には、淡いピンク色のドレスを着た女性が座っており、久しぶりにお目にかかる人物の姿を見たヒューゴは、思わず息を呑んだ。

艶やかな金色の髪の毛は、頭の高い位置まで纏め上げられ、それを髪の毛で緩やかに縛り付けている為か、小顔がより一層引き立てられている。前髪は耳の後ろから、キメ細やかな象牙色の肩筋を通り、下に垂らされている。

淡いピンクのドレスは、布地をたっぷりと使われており、綺麗な曲線美を描かれる様にデザインされているのだろうが、ドレスも体の一部なのではないかというぐらい、この人物には似合っている。

胸元には真珠のネックレスを着けているのだが、ネックレス越しに見えるキメ細やかな肌に比べると真珠も見劣りしてしまうほど綺麗だった。

少しの間見とれていたヒューゴだったが、すぐに我に返り、騎士の敬礼をすると、張りのある声で言葉を発した。

「セレスティア様、この度は私を宮殿にお招きいただきありがとうございます。陸軍騎馬大将補佐のヒューゴ・シャオシールです」

「お久しぶりですねヒューゴ。どうぞ楽にして」