風に揺蕩う物語

対するシャロンは、時間を有効に使いながら二つの思考を始める。

「勝算の計算など所詮は机上の空論でしかありません。確定的な策など施す時間もありませんでしたし、可能な道標さえあれば私は良かったのは事実です…ヒューゴ様を助ける事が出来る可能性がある。それだけで私にとっては行動理由になります」

深手を負い動けないムーアと、身動き一つしないアスラ。他の兵たちもほとんど投降したも同然であり、シャロン一人でヒューゴを連れて強行突破するなどそれこそ不可能。

もう一つは援軍による加勢でこの状況を打破する策。

時間を稼げば何かしらの動きがある可能性はゼロではない。だがこれは敵方も同様で、むしろ敵は時間をおけば必ず加勢が来るのが確実視出来る状況にある。

現状は最悪といえる。

それでも可能性を模索する必要がある。それほどまでにシャロンはヒューゴを助け出したいと考えているからだ。

どうにかして時間を稼がないと…。

シャロンは目まぐるしく変わる状況を読みながら、それでも冷静を保っていた。





何とかと煙は高いところが好きだと言うが、波乱が起きているエストール王国の広場に居るものの全ては、建物の屋根に佇む存在に気付いている者はいない。

顔まですっぽりと隠れた外套に身を包み、大きな体躯をした者が今まさに騒動に決着が着きそうな瞬間を遠目に眺めている。

「途中まではシャロンという女性の作戦が功を成していたんですが、やはり捕まりましたか」

その者が誰に語りかけているのか、広場を眺めながらおもむろに呟く。

「これはシャロンの責任ではないけどね。普通なら逃走が可能だったはずだよ。ただ気の流れを読まれてしまっては逃げられない」

あまりにも体躯に差があるので気づきにくいが、確かに外套を被った者の近くにはそれなりの大きさがある鷹の存在があった。