風に揺蕩う物語

次から次へとシャロンの考える策が披露される。アスラとムーアは次第にその会話に引き込まれる。

どれだけの時間が流れたのだろうか…。

3人はどこからか持ってきた大きな紙を広げると、そこに殴り書きの様にシャロンの策を書き出し、役割分担などを具体的に決めていく。

2人はすでに目の前に居る軍師に魅入られていた。反論など出来る訳がなかった…。

不可能だと思われていた事がいつの間にか可能になっていたのだ。下準備に時間はかかりそうなものの、それさえ越えれば何とかなる。

そう思わせる様な何重にも巡らされた作戦。

3人は互いに納得したのちに行動を開始した。時間がない。

準備を急ぐ必要があった。

「…最初の難関を超えれるか」

準備は完了した後は時を待つだけだ。その瞬間を見定めるように処刑場に居る友人を視界に捉え、アスラはただ時を待った。

処刑場に居た騎士たちに動きがあった。処刑場は特設で作られた13階段の上にある。罪人だけが上る事が出来ると言われている段数。

壇上の上にはすでにギルバートが配置についていた。

一人目をつむり瞑想しているかのように自分の心の整理をしているかのようだった。縄で縛られ、民衆に罵倒を受け続けているヒューゴは俯き加減にただその時を待っていた。

すると町中に響き渡るのほどの銅鑼の音が鳴り響く。

その音を聞いたギルバートは閉じていた瞳を開け、声高々に宣言した。

「これよりヒューゴ・シャオシールの処刑を開始するっ!」

民衆の間から歓声が起きた。最前列に陣取っていた観衆は目を血走らせながら腕を天に突き上げる。