「ふざけるな!この…反逆者がっ!」
群衆の中の一人の男が声を張り上げた。もちろんそれはヒューゴに向けられた言葉であり、憎悪の気持ちが生んだ罵声である。
この男の言葉でこの殺伐としていた広場の空気が一変した。張りつめていた空気が一気にはち切れ、爆発したかの様に罵声が飛び交うようになる。
それは集団心理による伝染であり、傍目から見れば暴動が起きたかのような熱量を帯びている。
だが警備をしている騎士達は、その群衆の動きを止める気配はない。なぜなら止めるように指示を受けていないからだ。公開処刑の段取りを阻害しなければ、何をしても自由だというなんとも寛大な警護。
そんな指示を出したのは今回の事件を表面上、解決に導いた立役者によるものだった。
一連の事件で、文官の極みでもある宰相に上り詰めた若い男。
「ふっ…」
シル・ロイスである。ロイスは処刑場から少し距離が離れている、高い位置にある特設席で群衆と処刑場を見渡せる位置にいた。その隣には今やエストール王国の頂点に居るヴェルハルトの姿もある。
そしてもう一人。銀髪に金色の瞳を持つ騎士の甲冑を着た、見た目はまだ年若い女性が居た。その容姿は何にでも染まってしまいそうな不思議な雰囲気を醸し出していた。
王族にも見えるし平民にも見える。当然騎士にも見えるその女性は、エストール王国の歴史の中でただ一人、女性の身でありながら将軍の位を授かった者。
『美鬼セリウス』
6ヶ国同盟領の国境付近にある十を超える城の城主であるにも関わらず、その一切が国民に公表されていない謎の人物である。
知る人ぞ知る人物だ。
そんなセリウスは今回の処刑が行われる現場に何故か姿を現していた。
「わざわざ遠方からのご足労痛み入りますセリウス殿。噂は前々から伺っておりましたよ…」
姿を現したというのに、今の今まで一言も言葉を発しないセリウスに、ロイスが障りのない程度の挨拶を言った。
群衆の中の一人の男が声を張り上げた。もちろんそれはヒューゴに向けられた言葉であり、憎悪の気持ちが生んだ罵声である。
この男の言葉でこの殺伐としていた広場の空気が一変した。張りつめていた空気が一気にはち切れ、爆発したかの様に罵声が飛び交うようになる。
それは集団心理による伝染であり、傍目から見れば暴動が起きたかのような熱量を帯びている。
だが警備をしている騎士達は、その群衆の動きを止める気配はない。なぜなら止めるように指示を受けていないからだ。公開処刑の段取りを阻害しなければ、何をしても自由だというなんとも寛大な警護。
そんな指示を出したのは今回の事件を表面上、解決に導いた立役者によるものだった。
一連の事件で、文官の極みでもある宰相に上り詰めた若い男。
「ふっ…」
シル・ロイスである。ロイスは処刑場から少し距離が離れている、高い位置にある特設席で群衆と処刑場を見渡せる位置にいた。その隣には今やエストール王国の頂点に居るヴェルハルトの姿もある。
そしてもう一人。銀髪に金色の瞳を持つ騎士の甲冑を着た、見た目はまだ年若い女性が居た。その容姿は何にでも染まってしまいそうな不思議な雰囲気を醸し出していた。
王族にも見えるし平民にも見える。当然騎士にも見えるその女性は、エストール王国の歴史の中でただ一人、女性の身でありながら将軍の位を授かった者。
『美鬼セリウス』
6ヶ国同盟領の国境付近にある十を超える城の城主であるにも関わらず、その一切が国民に公表されていない謎の人物である。
知る人ぞ知る人物だ。
そんなセリウスは今回の処刑が行われる現場に何故か姿を現していた。
「わざわざ遠方からのご足労痛み入りますセリウス殿。噂は前々から伺っておりましたよ…」
姿を現したというのに、今の今まで一言も言葉を発しないセリウスに、ロイスが障りのない程度の挨拶を言った。


