返事を返せない俺を前にしたギルバートは、それでも言葉を止めない。

「この際、偽物かどうかなどどうでも良いのだかな。わしがこの場に訪れた理由は、お主に沙汰が下ったのでそれの報告に来たのだ」

沙汰かぁ…随分と時間がかかったんだな。

「罪人ヒューゴ・シャオシール。貴君は今回の国王陛下並びに王妃殺害の容疑でシャオシール家の貴族の地位剥奪。並びに騎士としての号を剥奪。並びに公開処刑の実刑が下った。これはヴェルハルト様の勅命であり、もう覆る事はない…どういう意味か理解出来ておるだろうな」

うーん…財産を奪われ、騎士としての供養をされないって事だろうね。つまりは罪人として全てが扱われる。

「お主の今までの戦果はもちろん、過去のシャオシール家の先祖の功績すらも消えてなくなったのだ…何とか言わんかヒューゴ・シャオシールっ!」

我慢の限界が訪れたギルバートは、ヒューゴの胸倉を掴むとそのまま牢屋内の石壁に体を叩きつけた。その衝撃で古くなっていたのか石壁にはひびが入る。

すると長髪で隠れていたヒューゴの表情があらわになり、本日初めてギルバートとヒューゴの視線が合う事になる。

「何でも良い。演技でも何でも良いから言い訳の一つでもしないかヒューゴよ…お主がこの様な暴挙に出る訳がなかろうが」

やはりギルバート殿は優しいお方だな。

「ご迷惑をおかけします」

ヒューゴの眼に少し力が戻った。勝手に口が動き、ヒューゴの意思とは関係なく言葉が漏れだす。

「全くだ。年寄りに負担をかけるものではないぞ」

「弁明の余地もありません。最後まで迷惑をかけるみたいですから…」

そう…最後まで。おそらく最後まで。

「本当にお主という男は…感が良すぎるな」

ヒューゴは察していた。おそらくだが自分を処刑するのはこのギルバートだという事を…。