風に揺蕩う物語

大人が子供を窘める様な口調で話すアスラ。だがシャロンは聞き言葉に返し言葉という雰囲気で言葉を返す。

「以後気をつけます。それよりもアスラ様…今回の事の展開をお聞かせ願えませんか?」

「空返事だなこりゃ…まぁ無理もないけど」

アスラは苦笑を浮かべて場を和ませようとしているのだが、シャロンの表情に変化はない。ただ静かに見つめるのみ。

それもまた仕方ないと考えたアスラは、普段のふざけた様子を完全に消し、表情を真剣なものに変えた。

「俺が話そうとしている内容と同じだから説明するよ。簡潔に言えば御触れにあった様に陛下と王妃様が殺害され、その主犯がヒューゴだという事。それにセレスティア様とリオナスの行方が知れないという事。この知らせに嘘偽りは一切ない」

「あり得ません。ヒューゴ様がその様な横暴に出るなど」

「ヒューゴが陛下を殺害した瞬間を見た者が多数居る。あり得ない出来事だろうと、目撃者が居るのであれば、それはあり得た話に変わるんだ」

アスラははっきりと言った。ヒューゴが今回の謀反の主犯だと。

それでもシャロンは下唇をきつく噛むと、異論を言う。

「それでも私はヒューゴ様を信じます。長年お近くでヒューゴ様の為人を見てきました…絶対にそのような事は致しません」

少しも引く気配を見せないシャロンの様子を見たアスラは、真剣な表情を崩してにこやかに笑った。

「なるほどなるほど…やはりシャロンちゃんは俺達の考えに同調してくれるようだね。そうじゃないとこの場に足を運んだ意味がない」

少し拍子抜けをした様な様子を見せるシャロンをよそにアスラは、シャロンの手を掴み、しっかりと視線を合わせる。