風に揺蕩う物語

手がかりが少ない状況の中、少しでもセレスティアの行方を知る手がかりを求めての事だった。

シャオシール家の屋敷にはシャロン一人しかいなかった。シャロン以外の使用人は、この三日の間に蜘蛛の子を散らすかの様に暇を申し出し、屋敷を離れてしまたのだ。

要らぬ災いを避けての行動と言えるだろう。

屋敷の入口には憔悴し切ったシャロンがそれでも姿勢を正し、射抜くような眼差しで、派遣された王族騎士の部隊長と向かい合う。

「我々はシル・ロイス様の命により、シャオシール家の調査を賜った者だ。貴女はこの屋敷の使用人のようだな…この書面を拝見してもらいたい」

礼儀正しくそう言った部隊長は、シャロンに見える様に書面を広げて顔の前に突き付ける。その内容を見たシャロンは、その書面から視線を外して部隊長に視線を送る。

「お断り申し上げます」

シャロンの発言を待って行動に移そうとしていた騎士達が、信じられない様な表情でシャロンを見つめ、部隊長はその発言を聞き、眉間に皺を寄せる。

「貴方は自分が何を言っているのか理解しているのか?」

「はい。私はシャオシール家に御仕いする使用人です。主人がお戻りになるまでこの屋敷を守るのが私の責務です…私はヒューゴ様とリオナス様以外の指示には従えません」

シャロンの発言を聞き、辺りに居た騎士たちに緊張が走る。何故ならこの後に起こる出来事を予測しているからだ。

部隊長は腰に携えていた剣を引き抜くと下げた状態のままシャロンを睨みつける。

「今のシル・ロイス様の命はヴェルハルト様の命と同じ事。従えぬのなら切って捨てる事も出来るのだぞ…」

「承知しております」

シャロンは聡明の女性だ。それぐらいの事は理解出来ていた。