風に揺蕩う物語

王族騎士の兵舎では、日々の鍛練が出来る場所や、軍部に伴う武器や、騎士の宿舎があり、文官の元老院では、税収や地方整備の報告書などを取り扱う部署や、宮中で働く者の憩いの場としての場所もある。

そして王宮には、王族の住まいと他国の来賓に伴う社交の場などがあり、まさに特権階級の者以外は、宮中に入る事など夢の中の出来事である場所なのだ。

ヒューゴは城内に入ると、王族騎士の軍服を着た二人組の見張りを見つけると、笑顔で声をかけた。

「御苦労さま。通してくれるかい?」

「「もちろんでありますヒューゴ殿!セレスティア様からはお話を伺っています!お待ちしておりましたっ!」」

二人の王族騎士は、規律ある動きで向かい合うように方向転換し、1歩下がると、騎士の敬礼をしながらヒューゴに道を開けた。

この二人の騎士は、ヒューゴよりも10歳ほど年上ではあるのだが、昔からの顔見知りで、ヒューゴが王族騎士として王宮にいた頃からの知り合いだ。

気心の知れている間柄なのだが、この様な態度を取るのは、階級の違いはあるのもあるだろうが、おそらく違う理由もあった。

「二人とも辞めてよ。新手の嫌がらせかい?」

「「決してその様な事はありません!」」

「ふーん……そんなに僕を怒らせたいんだ。そうかそうか…」

「「………」」

ヒューゴはじとっと二人の顔を交互に眺めながらそう言うと、そのままその場を後にしようとした。すると騎士の二人は、少し慌てた様子でヒューゴに荒っぽい口調で話しかけた。

「ほんの冗談だってヒューゴ。マジに受け取るなよ?」

「アスラが言い出したんだからな。俺は嫌だって言ったんだ」

「おいムーア!俺のせいにするなよ!お前だって乗り気だったじゃねぇか」

「そんな事はない!俺は無理やりやらされたんだ」

先ほどの規律ある態度が嘘のように騒ぎ出したアスラとムーア。この二人はこの様な態度を取るのが普通だった。