風に揺蕩う物語

だがそれも徒労に終わっている。王族騎士であっても面会謝絶で、アスラやムーアはもちろん、ギルバートですら正規の方法では会う事は叶わなかった。

「攫うか?」

アスラはさらりとものすごい事を言ってのける

「それは流石に無理だろ…騒ぎを起こしたら俺達程度の力じゃすぐに捕まってしまうぞ」

「言ってみただけだ…はぁ」

万策無しの状態ではどうしようもない。

二人は自分たちの不甲斐無さを改めて痛感する事になった。

「取りあえず今は、ギルバート先生にかけてみるしかないだろうな。いま俺たちに出来るのはリオナスとセレスティア様を誰よりも先に見つける事。それと…」

「あぁ…今回の黒幕をはっきりさせる事だ。ジジイ共の証言はあてにならん。なまじ発言力を持っているだけに性質が悪いが、真相を見つける手立てはまだあるはずだ」

アスラとムーアは互いに視線を合わせ頷くと、牢屋のある通路からは離れ兵舎の出口の方向に歩いていく。

「俺はセレスティア様の捜索部隊と接触を図る。アスラは王宮で出来る限りの情報を集めてくれ」

「了解」

二人は自分たちに出来る事をする。超人的な力を持っている訳でもなく、頭が特別切れる訳ではない。だが行動力だけは人一倍ある。

自分たちが動く事でヒューゴの立場が良くなるのなら、喜んで動こう。年の離れた友人を助けるために、二人は己を犠牲にする覚悟があった。

ヒューゴが捕縛されて三日が経った…。

相変わらずリオナスとセレスティアの行方は知れず、捜索部隊の人数は1万を越え、懸賞金も出されて大々的に民衆に情報を求めていた。

その頃シャオシール家の屋敷には、数多くの王族騎士が詰めかけていた。