「納得がいかぬっ!もう一度最初から説明をしろ!」

「ギルバート殿。これで説明は10回目になりますぞ…いい加減認めぬか」

ギルバートは憤怒していた。国王と王妃が崩御したその日、不幸にもエストール王宮を離れ、地方の町に兵士の視察を行っていたギルバートは、早馬を潰しながらも急いで王宮に戻り、無理やり会議に参加して怒鳴り散らしていた。

「ヒューゴ殿の様な真の武人が、陛下や王妃様を手にかけるなど有り得ぬわっ」

「心中察するが事実だ。陛下や王妃様を殺害したヒューゴ・シャオシールを、ここに居る者達全てが見たのだ…信じられぬ気持ちはここに居る者全てが同じなのだ」

奥歯が軋むほど強く口を噤んだギルバートは、強力な腕力で机を叩くと椅子に座り、苛立ちを抑えきれない様子で腕を組んでいた。

会議室に居る者は悲しみの形容を見せている者も居れば、ギルバートの様に憤怒している者もいる。ただ一人冷静に様子を見ている者も居るが…。

「シル・ロイス殿。あなたがヒューゴ殿を捕縛したと聞いたが…それは本当なのか?あの神槍使いのヒューゴ・シャオシールを文官のあなたがどうやって捕まえたのだ?」

ギルバートが口火を切ったこの話題は、ここに居る者達全ての疑問でもあった。

静観していたロイスは、冷静な口調で説明を始める。

「私が個人で雇っている私兵で何とか食い止めたのだ…その場にいた私の私兵は全てヒューゴ殿に殺されてしまったがな」

「それはよほどの実力を持った私兵なのだろうな。私の教え子の王族騎士でも5、6人程度ではヒューゴ殿には歯が立たないはずだからな」

疑惑の念を抱いているギルバートは、ロイスの言葉に不快感を隠さずに反論を返す。

「ヒューゴ殿が槍を所持していれば手に負えなかったかもしれないが、不慣れな短剣での戦闘ゆえ何とか捕縛出来た…そうとしか私には言えん」