その音と同時に塞がれていたはずの椅子やテーブルは四方に弾け飛び、ドアは跡形もなく消し飛んでいた。

とても人間のなせる技ではない。

ドアの奥には薄ら笑いを浮かべるシル・ロイスの姿と、後ろに控える先ほどの追手達。ゆっくりとした足取りで中に入ると、ヒューゴの間合いの外で立ち止まる。

これで完全に逃げれる状況ではなくなった。出入り口は一つしかなく、そこには追手が二人陣取っている。

突破するにもセレスティアが完全に荷物になる。

倒すしかないか。だが先ほどの芸当は誰がやったのかで戦略が変わってくる。

追手の誰かがやったのか?それとも…。

「これは貴方の仕業ですかシル・ロイス!ここが誰の部屋だか分かってこの様な無粋な事をしているのですか?」

セレスティアは声を張り上げながらロイスに言い放つ。リオナスはそんなセレスティアの前に立ちながら剣を抜き、様子を見ている。

ロイスは優雅に頭を下げると、そのままの姿勢で返答をする。

「姫様は大変誤解していらっしゃるようです。私は姫様を助けに参っただけでございます…ランディス国王陛下とセレス王妃を無残にも惨殺した反逆者から守る為に無礼を承知でこの場に馳せ参じました」

「っ!?」

「なっ…」

セレスティアは口元を押さえながら目を見開き、リオナスは絶句の表情を浮かべる。ヒューゴはというと、下唇を噛み締め激昂に駆られた表情だ。

「戯言は大概にしておけよ貴様…てめぇが陛下と王妃様を殺したんだろうが!!」

ヒューゴの怒りの沸点は簡単に振りきれたようだ。短剣を片手に前傾姿勢を作り、戦闘態勢のライオンの様な出で立ちでロイスを射抜く。

「それは違うな。貴君が惨殺した光景を目撃した者が多数居るんだからそれが事実。老臣達が証言してくれる筈さ…今は衝撃が強すぎて気を失っている様だから、それはまた後日確認という事で」