この事態は想定どころか考え付きもしない展開だっ。

クソっあの男は何を考えてこの様な暴挙に出た。

追手の人数は6人で、そのうち一人は倒したから残りは5人か。時間を置けば更に増える可能性もある。

あまり時間はかけられないな。本気で行かないといけない…。

「何事ですか?」

眠気眼で呑気な口調でドアを開けたセレスティアは、目の前の光景を見て絶句した。そして恐怖のあまりその場にへたり込む。

その状況を見て思わず舌打ちをしたヒューゴは、リオナスに目配せをする。意図をくみ取ったリオナスは、セレスティアを抱えて部屋の中に避難する。

ヒューゴもなだれ込む様に部屋に入ると鍵を閉め、近くにあった椅子やテーブルを用いてドアを塞いだ。

「てっ敵襲ですか??」

セレスティアは身震いする体を必死に抑えながらヒューゴに聞く。リオナスも同様の疑問を持っている様で、ヒューゴに視線を送った。

「少し違います。あの者達は身内の者です…セレスティア様の御命を狙う不届き者でございます」

「身内の仕業……衛兵はどうしたのですか?なぜリオナスしか居ないのです?」

「おそらく眠らされているのでしょう。実際リオナスも私が駆け付けるまで眠りに着いていました。我が弟は職務を放棄して眠りに着くなど有り得ませんので、それが妥当だと考えられます」

妥当ではない。それが事実。

だがこれ以外の説明の仕方がない。真実を話したとしても信じられる内容ではないのだから…。

「…一体何者の仕業なのですか?この様な事をする不届き者は?」

「この男の口車に乗ってはいけません姫様。この男こそ今回の首謀者なのですから」

何が起きた…。

外から落ち着いた声音が聞こえたかと思えば、次に聞こえたのは大地を揺るがしそうな轟音。