セレスティアは明らかに酔っていた。化粧を施されているとはいえ、顔色はほんのりと赤みを帯びている。

僕は貴族とは言え、王女の自室に大した用もないのに入って良いのか?もう入っているのだから、いくら考えても徒労に終わるのだが。最後に入ったのは何時ぶりになるのか、思い出せないがやはり豪華な部屋だ。

昼間には日が差し込む窓の近くにある大きな花瓶には、日替わりで色鮮やかな花々が飾られ、床には継ぎ目のない絨毯が床全体に敷かれ、白と赤の精細な色彩が人目を引く。

本来は寝る為の部屋として使用されているのだが、流石は王女の部屋。客間はもちろん書斎や箱庭に浴場と、幽閉されたとしても特に不自由しないほどの空間がそこにはあった。

ドアを開けた先に広がるのは客間なのだが、そこにはシャロンの姿があった。

シャロンもセレスティア同様にかなり酔っていた。顔色に変化はないが、明らかに目が座っている。それにいつもはどんな状況だろうと僕の前では姿勢を正して
迎えてくれるのだが、今は多少悪い姿勢で座っている。

顔だけを僕に向け首を傾げながら見つめると、おもむろに口を開いた。

「ヒューーゴ様っ遅かったですね。シャロンはずっとお待ちしておりました」

どうも初めまして。僕はヒューーゴ・シャオシールと申します。障りのある名前でごめんなさいと…。

「ごめんねヒューゴ。ちょっと緊張している様子だったから、お酒を進めたんだけど…飲ませすぎちゃいましたっ」

全然反省している様子のないセレスティアと、おそらく後日後悔の念に捉われるであろうシャロンを前に僕は、本日何度目になるかわからないため息を吐かざる負えなかった。

ここまで喜怒哀楽を一日で表現したのは初めてだったかもしれない。

今日一日の出来事は忘れる事の出来ない一日になった。

こんな平穏で刺激のある日々を僕はこの体が限界を迎えるまで生きてみたい。

本当にそう思う一日だった…。