風に揺蕩う物語

友人と談笑をしている。友人とは一体誰の事を言うのだろうか。

王女の自室に入れるだけの身分を持っている友人などかなり限られる。正直僕でも近衛兵の立場を持っていないと入ることなど決して叶わない。

そうなるとシャロンはどこに居るのだろうか。セレスティアがシャロンを放り出して、友人との談笑に耽るなど考えずらいし…。

行ってみるしかないだろうな。

セレスティアの自室の場所は当然知っている。それに自室の前では、リオナスが警護の任に就いている可能性も高い。

リオナスが居れば現状を聞く事も出来るので、僕はセレスティアの自室に向かって歩を進めた。

王室がある場所は王宮でもかなり奥まった場所にある。少なくとも3回ほど検問を突破しないとその場所には行けない。

王族騎士が交代をしながら昼夜警護をしているのだ。僕は特に何も聞かれる事なく素通り出来る立場に居るので、返礼を返しながら歩を進めた。

そして思惑どおりセレスティアの自室の前にはリオナスの姿があり、大剣を杖代わりにしながらその場に立っていた。

「セレスティア様は自室にいらっしゃるのかい?」

僕の声を聞いたリオナスは、ゆっくりと振り向くと一度深く頷き、溜息を吐いた。

「居ますよ。それにシャロンも中に居ます…」

「はぁ??シャロンも中に居るのかい?」

もしかしなくても友人というのはシャロンの事のようだ。

流石にそれはまずいだろと思った僕は、驚いて開いた口が塞がらなかった。

「シャロンも必死に断わりを入れていたのですが、セレスティア様が強引に連れて中に入られました。その後の事は俺も知りません…楽しそうな話声は時折聞こえてくるので、粗相は働いていないでしょうが」

「シャロンに限ってそれはしないだろうけどさ…何を考えているのやら」