風に揺蕩う物語

「ごめんよシャロン。僕がもう少し気にかけるべきだった…足は大丈夫かい?」

足を抑えながら苦痛の表情を浮かべるシャロンを眺め、僕は深い後悔の念にとらわれていた。

予想以上だ。これほどの数の男たちが、シャロンにダンスを申し込むとは…。

不慣れな踊りと履きなれていない靴。途切れない男たちのダンスの申し込みで、シャロンの脚は悲鳴を上げていた。

靴擦れで両足の甲には痛々しい内出血を起こしており、シャロンじゃなければとっくの昔に踊れなくなっていたことだろう。我慢に我慢をして踊り続けた結果、足がもつれてその場に倒れてしまい、その騒動が起きて初めて僕は、ジャロンの異変に気づいた。

僕は良い気分でセレスティアとダンス楽しみ、その後はまた他愛もない会話をして有意義な時間を過ごしていた。シャロンの事は頭の中からスッポリと抜け出ていた。

異変が起き、急いでその場に駆け付けた僕は、シャロンを抱えて会場の外に出ると、椅子にシャロンを座らせた。

「大丈夫です…ご迷惑をかけてすみませんでした」

「そんな事はないよ。僕こそ本当に済まなかった…少し調子に乗り過ぎたよ」

シャロンに恥ずかしい思いもさせてしまった。

これは僕の恥ずべき失敗だ。調子に乗り過ぎたのだ。一体僕はシャロンに何をしてあげたかったのだろうか…。

「そんな事はありません。私は踊りというものがあれほど楽しいものだと知りませんでした」

会場の熱気から解放されたシャロンは、吹き出るように汗が流れている。

幾分無理して笑顔を装うシャロンだが、やはり痛みと疲れが襲う体には嘘をつけないようで、無理をしているのは明らかだった。

「僕に気を使わなくて良いよ。断れない誘いを受けたシャロンの事をもっと気にかけるべきだったんだ」

自己嫌悪に陥っているヒューゴは、溜息を吐きながら自分を責めていた。シャロンもまた己の不甲斐無さに浮かない表情を見せる。