そんな姿を視線に収めながら多少不機嫌そうな表情をしているヒューゴは、賑やかな雰囲気とは裏腹に、考え事をしている様に見える。

失敗したかぁ…予定が狂っちゃったな。

シャロンの社交界進出作戦という名の使用人自慢作戦が水泡に帰した事が、ヒューゴの気分を落としていた。

絵に描いた堅物だとは思っていたけど、ここまで頑なに断られるとは思ってなかった。でもまぁ、出来心で用意した舞台だし、もっと適切な方法でシャロンを紹介する事も出来る。

これから始まるであろう催し物を楽しみにしていたヒューゴだったが、シャロンが居ないのであればそれはもう何の楽しみもなくなる。

少し挨拶回りをしたらすぐに帰るという結論に達したヒューゴは、壁に寄りかかっていた姿勢を直した後、何気なく視線を向けた先に困惑と書いてあるシャロンと、軍服の正装に着替えたリオナスの姿があった。

「どうしたんだ一体…」

頑なに来ないと言っていたのに、なぜか会場に姿を現すシャロンを不思議がったヒューゴの視線を受けたリオナスは一言

「外で一人で待っていては、かえって目立ちますので連れてきました」

とだけ言うと、ヒューゴにシャロンを預け、その場を後にした。

シャロンは周囲を見回し少しの時間視線を彷徨わせた後、ヒューゴに視線を向ける。

「私はどう振る舞えば…よろしいのでしょうか?」

「うーん…そのままで良いと思うよ。気品があって良い感じだしね」

ヒューゴがいくら言ってもどうにもならなかったシャロンが、リオナスの強引な手段でこうして会場に姿を現した。

おそらくリオナスの目立つという言葉を、迷惑をかけてしまう行為と考えて腹を括ったのだろう。

「それでは……そのように致します」

…暗いな。暗すぎる。

「シャロン。宴なんだから、もっと楽しそうな表情をしようよ。あえて足りない所があるとすればそれだけかな」