―――…

「おい、なにボーッとしてんだ?」

こいつは、楠木悠斗。
ヘラヘラしてるわりに頭はいい。
そして、唯一、おれと琥珀のことを知ってるやつ。

「なんでもねー。」
「なんでもねーのに気づいてねぇのか?もう放課後だぜ?」

「……は?」
時計を見ると…
「マジだ…。帰んねぇと…。琥珀は?」
「いるだろ。そこに…」

悠斗がおれの背後を指差す。おれも見る。

「あ。」
「後ろにいるの…気づかなかったの?」
「悪りぃ。」
「ま、いいや。早く帰ろ?」
「ん?あぁ。」
隣でヒューヒューと茶々をいれる悠斗を無視して、琥珀と並んで校門に行く。
家に着くまで、おれも琥珀も無言だった。


家に入り、ソファーに座ると琥珀がおもむろに口を開いた。

「あたしの両親、殺されてるの。」
「ああ、朝言ってたな。」
「違う。あの人達があたしの両親を殺したの。」
「え…?」
そして辛そうな顔をする琥珀。


「あたしのパパは
お兄さんがいて

兄を差し置いて
頭主になったパパを
お兄さんは恨んでた。

パパのこと恨んでたのは
お兄さんの奥さんも
同じだったから……。」