俺は声がでなかった。

数年前に突然俺の前から姿を消した
最愛の女が目の前にいたからだ。

「大翔様、この女性はわたくしが拾いました」

拾う?

「ここにいる全ての女性は
なんらかの事情でこちらに迷い込んで来た方です。」
俺はおっさんの言う事を真剣に聞いた。

「暴力を振るわれ続け、やっとの思いで逃げてきた者や、生きる気力をなくした者や、様々な方がいらっしゃいます」

「わたくしはその方達に尋ねます。こちらに入ると身の安全はありますが、永久に死を迎える事はありません。今までの記憶全てなくなりますが、どうしますか?と。」

俺はおっさんが、現実から掛け離れた話しをしているのにもかかわらずふんふん、とうなずく。

「そして、希望された方のみ、入られます」

「ちょ、ちょっと待てよ、なんで俺を連れてきたんだ?」