少し金持ちの家の応接間のようなところに案内された。
高級そうなソファーが並び、
きゃしゃな女の子なら、とてもじゃないけど一人では持ちあげれないだろうなと思うくらいのデカイガラステーブルが部屋のど真ん中に置いてある。

「大翔様、大丈夫ですか?」
いつの間に用意したのかおっさんは俺にホットティーをだしてくれた。

「大丈夫だけど、香奈はどうしていきなり暴れだしたんだよ?」
さっき香奈につかまれた手首を触った。
「った・・・!」
激痛が走った。

「折れてますね・・・。」
そういっておっさんが俺の手首に手の平をかざした。
信じられないことに痛みが一瞬で消えた。

「もう大丈夫ですよ」

何者なんだこのおっさんは・・・・

「あなたが香奈と呼ぶあの方は、わたくしが発見した時には傷だらけでした。」

おっさんが発見したときに、香奈は手錠をかけられていて、腕には無数の針がささった跡があったらしい。
足は折れていたし、服はTシャツ一枚。

雪が降り積もる真冬だぜ?

「大翔様がお帰りになったあと、いつもあんな風に暴れだすんです。」

いつも・・・?
「もしかして、香奈は完全に記憶が消えてないのか?」

「はい。記憶が完全に消えなかった例は今までにはないのですが、あの方だけはなんどやっても記憶が消えないんです。あんなに暴れだす方も初めてですし、わたくしでは手におえなくなってきています。」

「そこで、俺をここに連れてきたわけか。」

香奈は何を隠そうタイトル総なめの強豪プロボクサー。
鍛え上げられているんだから、本気でつかめば俺の手首をへし折るくらいわけない。

普段はボクサーってことをかくして、俺の店の稼ぎ頭、ナンバーワンだった。

「俺があそこから香奈をつれだすよ。時間はかかるかもしれない。でも、おれは絶対連れ出す。」

「あの方は、外に出たがっています。でも、出れないのです。
わたくしが言うのもなんですが、連れ出してあげてください。」