『…ごめんな……』 あの時の、彼の顔は切なそうに笑っていた。 その声が、 本当に私を思ってくれているとわかり、 何も言えなかった。 栗塚さんが、小さく呟いたあの言葉 耳元にまだ、残っている。 離れない。 低く、掠れたような、 彼の、私を心配してくれる気持ちが詰まった、優しい声 首筋にかかったあの吐息を思い出し、 私の身体に小さく熱を持たせた。 大事なの。 彼を思うこの気持ちが 護られるだけでは、嫌なのだと、 その思いだけが、私を苦しくさせる。