狗喰い~刻のまにまに~

「な、何でもねえよ。買わないんなら他へいくよ」

「この頃柔らかい肉は食ってないからな。貧弱なのはまあ、この際目をつぶろうか。買うよ。首輪もかねてな」

「え、それは……」

 俺はきびすをかえした。

 もう、何がなんだかわからない。

 この首輪で足が付くかもしれない。

 そう思うとへたなところには捨てられない。

 お嬢の犬だとわかってしまったら?

 くそ! バレたのか? そうでないなら良い。

 ならなぜ、俺はこんなに必死に走ってるんだ?