「十字架は胸の中に・・・」




 夕空を見上げると、紅と蒼のコントラストが目に入った。


 自由自在に、風の赴くまま流され、朱に染められてゆくあかね雲。


 郵便物を確認しに行った私はそのままドアを開け放つとダイニングを尻目に部屋に戻る。

 ただ腰掛けに座っているだけなのに、どこかしら胸の中が切ないような、そんな気がす
る。


 これが哀しみというものなのかもわからないし、ましてや今まで生きてきて、寂しさなんて味わったことがない。

 
 ただ、苦痛を伴う感情ならたくさん持ってる。
 

 誰かを待つのはつらい。


 心が引っ張られる心地がする。


 なにも手に付かなくなる。